森にて

 森は緑の季節である。森などとたいそうなものでなくても、身のまわりに何かを思いだしたように緑の輝く季節だ。できるだけ緑の濃い場所に出かけていって深呼吸してみる。緑の呼気が躰をめぐり、のんびりした私でも季節に追いついたような気がする。意識して音を聞いてみる。実は、鳥の声が思いのほか近いところでしていたことに気づくのだ。そして、青々とした木々の匂い、鄙びた土の匂い。世界を少し取り戻すこともできるかもしれない。

  さながら風が木の葉をそよがすように
  世界が私の心を波立たせる
  時に悲しみと言い時に喜びと言いながらも
  私の心は正しく名づけられない
      (谷川俊太郎『六十二のソネット』より60から)
              この後も素晴らしいのですが…

これが私の優しさです 谷川俊太郎詩集 (集英社文庫) 谷川俊太郎といえば、ジブリの最新作の主題歌「世界の約束」の詞が彼の作品だ。もう七十を超えると思うが、彼の言葉には曇りはない。おそろしい。そういえば、鉄腕アトムの主題歌「科学の子」も彼の作品。「耳を澄ませ、ららら目を瞠れ…」今、世界の平和を創ってゆくために最も必要なこと何じゃないかなあ。やたら好戦的に構えるなんて意味がないと、アトムが教えてくれてるのに、それを忘れてしまったオトナが多すぎませんか?