夏至の夜

 今日は夏至。夜空は曇っていますが、満月の宵であるらしい。一年で最も昼が長いということは、最も夜が短いということである、謂うまでもなく。
 シェークスピアの「夏の夜の夢」はこの夏至近くの一夜の物語で、「真夏」というのとは少し違うらしい。一年で最も短い一夜の物語である。やはり名作は、舞台も一流。長すぎる昼に目を眩まされているうちに、気付くととっぷりと深い夜の中である。恋人たちの愛も、妖精たちの悪戯も、お騒がせな村人たちもあっという間に朝になってしまうこの夜に絡め取られてしまうと言うべきか。今夜、どこかでパックが飛び回っているのだろうか。
 メンデルスゾーンの有名な劇音楽もこの物語を彩っている。特に、「序曲」が出色。闇に沈むにつれて神秘的になってゆく森。その奥でタチの悪い妖精たちが跋扈する様を描き出す。ちなみに、あの「結婚行進曲」もこの劇音楽の一部である。誰でも知っている、あのトランペットのファンファーレ、最近ではテレビCMで歌までつけられていますが。あれは、トランペッターとしては絶対トチれないが練習するには恥ずかしすぎるというとても厄介な一曲だそうです。

シェークスピア小田島雄志訳でどうぞ…夏の夜の夢 (白水Uブックス (12))